妊娠すると「どんな飲み物を飲んだらいいのかな?」と飲み物やお茶で悩む妊婦さんが多いと思います。多少のカフェインは大丈夫と聞いていても、お腹の赤ちゃんのことを考えると出来ればノンカフェインの飲み物がおすすめです。
ハーブティーは基本的にノンカフェインな物が多く、妊婦さんにおすすめです。
しかし、妊娠中には禁忌のハーブも多く悩む妊婦さんも多くいます。 助産師ハーバリストが妊娠中でも安心なハーブティーをご紹介いたします。
妊婦さんにおすすめのハーブティー
春や秋になると道端に咲いている黄色いお花の西洋たんぽぽの根っこのハーブティーです。
インドのアーユルヴェーダやアラビアのユナニ医学などの伝統医学では肝臓や胆のうの不調、リウマチなどの体質改善として自然薬(ナチュラルメディスン)として活用されてきた歴史あるハーブです。 また漢方では蒲公英という名でたんぽぽの全草を生薬として使用しています。
肝臓や胆のう、胃などの消化機能を促進したり、便秘やむくみを解消したり、血液をキレイにする働きがあると言われています。
ダンディライオンにはごぼうや菊芋などにも含まれるイヌリンという水溶性の食物繊維を含んでおり、このイヌリンが腸内環境を改善し、便秘改善に役立つ働きがあります。
妊娠するとホルモンの影響や大きくなっていく子宮に圧迫されて便秘になる妊婦さんが多数います。もちろんひどい時は便秘薬を使用する必要がありますが、予防としてダンディライオンのハーブティーがとてもおすすめです。
またダンディライオンの根を軽くローストして入れたハーブティーを「タンポポコーヒー」といい、ノンカフェインなため妊娠中のコーヒーの代用品としてよく飲まれています。
ここで注意して欲しいのが、ダンディライオンには西洋たんぽぽの根を使用した「ダンディライオンルート」と西洋たんぽぽの葉を使用した「ダンディライオンリーフ」があります。妊娠中の便秘ならダンディライオンルート、むくみならダンディライオンリーフを飲んでくださいね。
ダンディライオンは母乳分泌作用もあるため、産後にも大活躍するハーブです。
ヨーロッパでは古くからストレス性の高血圧や不眠、風邪やインフルエンザに使用されてきた歴史があるリンデン。
リンデンの精油成分の一種であるファルネソールの甘い香りがココロとカラダの緊張をほぐし、不安や興奮、不眠などの精神的なストレスを和らげる働きがあると言われています。
また汗や尿を出す働きもあることから、むくみや風邪の引き始めなどにも役立つことが分かっています。
妊娠中に感じるイライラで気持ちが高ぶっている時、不安や緊張で眠れない時など温かいリンデンティーの香りが心と身体の緊張をほぐし、リラックスへ導いてくれるでしょう。
作用がおだやかなため、子どもからお年寄りまで安心して飲むことができるのも妊婦さんにおすすめの理由のひとつです。
ビタミンCを豊富に含み「ビタミンの爆弾」と言われているローズヒップ。その他にもフラボノイドやペクチン、ビタミンE、果実酸などの成分を豊富に含むのが特徴です。
レモンやグレープフルーツ、オレンジなどの柑橘類に多く含まれるペクチンと呼ばれる成分は食べ物の細胞壁に存在して、植物細胞をつなぎ合わせるセメントの働きをしています。このペクチンはゲル化剤の一種でヌルヌルしている成分を含んでいます。
水分をたくさん吸収してヌルヌルしたゲル状になって、腸にたまった便に水分を与えながら排便を促す働きがあります。
また腸内環境を整え、乳酸菌などの善玉菌を増やす働やしたり、腸の蠕動運動を促進して便秘を改善する働きがあります。
便秘改善であれば熱湯を入れてから15分くらい置いてぬるぬるしてから飲むのがおすすめです。ダンディライオンとのブレンドもおすすめです。
熱帯アジア原産のジンジャーは昔からヨーロッパや中国で薬用植物として医療に使用されてきた歴史があります。生のジンジャーを生姜(ショウキョウ)、乾燥したジンジャーを乾姜(カンキョウ)と呼びます。
以前は乾姜は妊娠中は禁忌でしたが、現在の安全性はクラスⅠ(適切な使用において安心)へ変更になり、妊婦さんでも乾姜を使用することが出来るようになりました。
胃を温めて消化を促す働きがあり、吐き気や胃痛に役立つため妊娠中の吐き気に役立ちます。 しかしジンジャーをたくさん摂ることは刺激過剰になる危険があり、適量であれば問題ないですが大量に摂取したり、妊娠初期は控える方が無難です。
カフェインだけじゃない!妊娠中にハーブティーを飲む際に気をつけること
妊娠中にはノンカフェインでミネラルが豊富なハーブティーはとてもおすすめですが、飲み方や飲む量に気をつける必要があります。
ハーブの種類によっては子宮を収縮させたり、ホルモン作用を持つハーブもたくさんあるため、ハーブティーを飲む時は必ず妊娠中でも大丈夫か確認し、飲む量や飲み方、一日の飲む回数をしっかりと守って飲むようにしてください。
妊娠中にOKと言われているハーブでも間違った飲み方をすると非常に危険です。
例えばローズヒップや桑の葉は妊娠中の便秘にもとてオススメですが、一度にたくさん飲んだり、濃いハーブティーを飲んだり、ハーブティーで水分補給をすることは下痢を引き起こし非常に危険です。 妊娠していない女性が下痢をしても時間とともに治まっていきますが、妊婦さんは下痢が引き金になって切迫早産や切迫流産を引き起こす危険があります。
またルイボスティーを毎日たくさん飲んでいた妊婦さんの胎児に、赤ちゃんの血管の一部が閉鎖してしまう「動脈管早期収縮」を引き起こす危険があることが最近の研究で分かってきました。ルイボスティーに含まれるポリフェノールが原因と示唆されています。ルイボスだけではなく、チョコレートやココアなどにも多く含まれていますので注意が必要です。
上記のようなことから、妊娠中のハーブティー飲用はカフェインよりももっと気をつけないといけないのです。特に妊娠初期のハーブティー飲用はあまり積極的には推奨していません。出来れば安定期に入ってからがオススメです。
妊娠中のハーブティーの適切な使用とは?
「適切に使用すれば問題はない」、「常識的な範囲で」とよく言われるハーブティーですが、そもそも妊娠中の適切な飲み方や適切な量、回数について記載してあるものがあまりないため、助産師ハーバリストである私が考えた適切な使用について下記にまとめました。
①妊娠経過に異常があったら飲まない!
②よくお腹が張る妊婦さんは飲まない!
③出血がある妊婦さんは飲まない!
④ウテメリンなどの張り止めを飲んでいる妊婦さんは飲まない!
⑤体調に不安があるときは飲まない!
⑥ハーブティーに対して不安や疑問がある時は飲まない!
⑦一度に飲む量はティーカップ1杯まで!
⑧ハーブティーの濃さはいつもより薄くする!1回1gもあれば十分!
⑨一日に飲む回数は1~2回まで!基本は1回、体調に合わせても多くて2杯まで!
⑩はじめは少しずつ飲んで、お腹の張りや出血などなければ、1日1~2回にしてもOK!
⑪飲んだ後にお腹の張りを感じたり、出血があったり、いつもと違う感じがした時はすぐにかかりつけの病院を受診する!
不安や心配があるときは飲まないこと!
ハーブティーが妊婦さんにおすすめと上記に書きましたが、大丈夫かな?赤ちゃんに影響はないかな?など不安や心配があるときは、飲まない方が無難です。
大丈夫かな?と考えることがストレスになり、お腹を張らせる原因になったります。
またハーブティーが原因でなくても、何か異常があったときに「あの時に飲んだから・・・」と自分を責めると、せっかく効果を期待して飲んだのに本末転倒です。
ハーブティー全般に言えることですが、不安や心配があったら飲まないにこしたことはないです。代わりの飲み物はたくさんありますのでね。
ネットの情報を鵜呑みにしないこと!
ネットで検索すると妊婦は○○ハーブを飲んではいけません!とよく書いてあるのを目にしたことがあるんじゃないでしょうか。でもそれって、なぜ妊婦さんにだめなのかの根拠は書いてありましたか?実はほとんどの記事にはエビデンス(科学的な根拠)は書いてありません。そして記事を書いている人のほとんどがライターです。
正しい情報が得たいのであれば、書いている人がどんな人なのかを確認するといいです。本などから知識や情報を得ることもおすすめです。
またルイボスティーやチョコレートなどのポリフェノールが胎児の動脈管早期収縮を引き起こした事例があると書きましたが、たくさん飲んだり食べたりするのが危険であって適量であれば問題はありません。
いくら身体にいいと言われている食べ物や飲み物でも、一度にたくさん摂取すれば身体に悪影響を起こすことがあります。それはルイボスティーに限ったことではなく、全ての飲み物・食べ物に言えることです。
必ず適量を守り飲用することが重要です。
まとめ
ハーブティーはノンカフェインで妊婦さんにはおすすめですが、実は妊娠中に飲んではいけないハーブも多数あります。 子宮を収縮させてしまうハーブ、ホルモン作用のあるハーブ、刺激のあるハーブなどは切迫早産や切迫流産を引き起こす危険があり、妊娠中に飲むことは非常に危険です。 正しい知識を持って、適量を飲むことはマタニティライフを快適にしてくれるでしょう。
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